大判例

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広島高等裁判所 昭和28年(う)337号 判決

昭和二十年運輸省令第四十号第四条の三第一項に所謂引揚とは海底等の海域に何人の事実上の支配管理にも属しない状態で存在して居る爆発物件等を海面に顕出浮上せしめ之を自己が事実上直接に支配管理し得る状態に置くことをいふものと解するを相当とする。論旨摘要の昭和二十六年海上保安庁告示第二十三号爆発物件等の引揚又は解撒の手続等に関する件第十条(昭和二十七年海上保安庁告示第十二号に依る改正前のもの)には所論の様に引揚作業中の一区分として引揚の外に輸送の区分を設け、輸送陸上等に関し遵守すべき措置を規定して居るが、右は前記運輸省令第四条の三第三項に基き災害の発生を防止し、公共の安全を確保する為、引揚行為夫自体のみならず、引揚行為の当然の事後行為である引揚物件の輸送に付ても特に遵守すべき措置を定めたものであつて、引揚の許可を受けた者が其の実施に当つて遵守すべき方法措置を規定した中に所論の様な輸送に関する規定があるからといつて、運送陸上が完了しなければ所謂引揚行為が完了しないものとすることは出来ない。この事は右告示第十条の解撒作業中に解撒行為夫自体に付てのみならず、解撒行為自体に属しないことが自明である解撒の為の貯蔵に付ても遵守すべき措置を規定して居り、又右告示の昭和二十七年海上保安庁告示第十二号に依る改正後の第十二条には解撒工場施設の構造位置及設備の技術上の基準に付ても規定して居ることや、右告示に依り廃止せられた昭和二十五年海上保安庁告示第二十八号には引揚の中に輸送に付て何等の規定なく、却て引揚げられた爆発物件等は陸上に揚げることを禁止して居ること等からして明白であるといはなければならぬ。

従て原判決が本件魚雷が海面近くまで引き揚げられ被告人等の事実上直接の支配管理が可能な状態に達したときを以て前記省令第四条の三第一項に所謂引揚げが完了したものと解したのは真に相当で、原判決には何等所論の様な法令の解釈適用を誤つた違法はない。而して原審に於て提出取り調べられた証拠に依れば、原判決の判示して居る様に、被告人等は本件物件を海面近く迄引き揚げると同時に夫が魚雷であることを覚知したものであることが認められ、当初から爆発物件等があることを知りながら本件物件を引揚げたものであると認めるに足る証拠は存しないから、原判決が此の点に関し被告人等に罪を犯す意思がなかつたものとして無罪の言渡をしたのは相当であつて其の後本件魚雷を呉市まで持帰り之を松岡方倉庫に搬入し同人に対し之を売却したことを引き揚げ行為として認定判示しなかつたからといつて前記省令第四条の三第一項違反の訴因に付事実誤認の違法があるものといふことは出来ない。

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